テレワークに伴う地方移住のメリット・デメリットとは? 

 

近年の急速なテレワークの普及や、「働き方改革」が追い風となり、場所を選ばず仕事ができる環境が整ってきました。
テレワークの浸透は、これまで地方移住の大きなハードルとなっていた、仕事環境の変化や収入面の問題をクリアすることにも繋がります。 
またそれに伴い、昨今では若い世代の中にも移住を検討する方が増えてきています。 

では、テレワークを活用しながら地方移住をすることにはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか? 
本記事では、テレワークに伴う地方移住について、暮らし方や支援制度、企業の事例などを挙げながら、詳しく解説いたします。
地方移住を検討されている方は、ぜひ参考になさってください。 

テレワークに伴う地方移住が増加している背景

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、人々は基本的な感染防止策の一つとして3密の回避が求められました。
同時に、人との接触を避けるため、テレワークを導入する企業も増加しました。 

コロナ禍が続く中、テレワークが定着するようになり、これまでスタンダードだった「働くには通勤が必須」という概念は薄れつつあります。
実際に、こうした働き方におけるニュースダンダードの台頭に伴って、テレワークの恒久的な導入を決め、多様化する働き方に対応する企業も現れてきています。 

場所を問わない働き方の浸透は、働き手が持っていた旧来の”勤務地に近い場所に拠点を持つ”というライフスタイルの見直しに繋がっています。 

また、ニューノーマル時代と呼ばれる今、仕事中心の生き方から、プライベートや日常の暮らしも充実させる、ワークライフバランスの実現を目指す方も増えており、「テレワーク移住」「ワーケーション」など、移住に関わる新しい言葉も登場しています。 
このように、地方移住への関心の高まり、移住の増加は、コロナ禍によるさまざまな社会の変化が背景にあるといえます。 

実際に、2020年6月の内閣府の調査では、地方移住への関心が高まったと答えたテレワーク経験者は約25%いることも明らかになっています。 
また、2020年9月に内閣より発表された「東京圏、地方でも暮らしや地方移住及び地方への関心に関する意識調査」をみてみても、特に若者世代を中心に地方移住にポジティブな印象を持っていることが分かります。 

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テレワークに伴う地方移住のメリット 

まずは、テレワークに伴う地方移住のメリットをご紹介します。より生活しやすい環境の実現、プライベートの充実が期待できるでしょう。 

メリット1.生活に係るコストが低減する

1つ目のメリットは、都市部に比べて生活コストを低減できることです。特に住まいに関しては、都市部よりも地方のほうが安く、かつ広い家に住むことができます。 
また、農業や漁業が盛んな地域であれば、農産物直売所などがあるため、安価で新鮮な食材が手に入りやすいでしょう。

時には、ご近所の方が野菜や果物のおすそ分けをしてくれることもあり、地域住民同士の横のつながりを受けやすい点も特徴です。 
都市部で生活するよりも家計への負担が抑えられるため、経済的にも暮らしやすい環境が整っているといえます。 

メリット2.家族との時間が増える 

地方へ移住し、仕事がテレワークになると、通勤そのものがなくなります。 
朝早くに出勤し、夜遅く帰宅する都会における働き方では、子どもとなかなかコミュニケーションがとれない、ということも多いです。 

しかしテレワークであれば、そうした通勤に必要としていた時間をそのままプライベートに充てることができます。
家族と過ごす時間が増えるため、よりコミュニケーションを深めることも可能です。 

日常の暮らしを大切にしたいと考える方にとっても、地方移住は大きなメリットがあります。

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テレワークに伴う地方移住のデメリット

テレワークをしながらの地方移住は、メリットばかりではありません。
大きなライフイベントであるからこそ、マイナス面についても把握しておくことが大切です。 

ここでは、2つのデメリットについてみていきましょう。 

デメリット1.出社時に移動コストがかかる

1つ目のデメリットは、出社が必要になった際の移動コストが大きいことです。 

永続的なテレワークが可能な環境であっても、どうしても出社しなければならない事情が出てくることもあります。 
月に1度、年に数える程度、などであればそれほど問題にはなりませんが、移住先と会社を高い頻度で行き来するような場合は、かえってコスト増になる可能性があります。 

加えて、交通が不便な地域では、会社への移動だけでもかなりの時間を要します。 
そのため、「電車やバスの本数が少ない」「都市部へアクセスしづらい」など、地方ならではの交通事情を理解した上で移住を検討する必要があるでしょう。 

デメリット2.コミュニケーション不足が起きる

テレワークの大きなデメリットとして2つ目に挙げられるのが、一緒に働く人とのコミュニケーション不足です。 
テレワークでは、業務上のやり取りはチャットツールなどを使用することが基本です。
テキストベースでコミュニケーションをとることになりますので、言葉のニュアンスで解釈違いやミスが起こることもあるでしょう。 

また、仕事の潤滑剤の役割を果たしていた雑談や世間話をする機会も減るため、困りごとを気軽に相談しにくい、といった状況も起こり得ます。 テレワークによるコミュニケーション不足や、モチベーションの低下を防ぐため、最近では企業側もさまざまな工夫を行っています。
例えば、ビデオ会議システムを活用して、チーム内でランチミーティングを開く、定期的な1on1ミーティングを行う、などの事例が挙げられます。 

このように、コミュニケーションに関する課題については、多様なツールを活用することで解決できる可能性があります。 

テレワークで地方移住をした際の暮らし方

地方移住には、さまざまなパターンがあります。 
軸足を100%地方に置かない、あるいは知っている土地に移住するというのも、地方移住の1つの形です。 

ここでは、2つの暮らし方についてご紹介します。 

Uターン

「Uターン」とは、地方出身で、仕事などのために都市部で暮らしていた方が、再び故郷に戻って生活する、というパターンです。
例えば、七尾市で生まれ育った方が、進学や就職を機に上京した後に、テレワークの導入をきっかけに七尾市に移住する(再び戻ってくる)、などのケースが当てはまります。 

気候や風土、交友関係など、暮らし慣れた環境がある地元であれば、移住後にギャップを感じることもなく、心身ともにのびのびと過ごすことができるでしょう。 

また副業を認めている企業であれば、自分のスキルや経験を生かし、地域に貢献できるような仕事を始めることも可能です。 
Uターンに近い移住の形として、「Jターン」というものもあります。 Jターンは、生まれ育った地元に戻るのではなく、地元に近い「地方都市」への移住を指します。
交通や暮らしの利便性が高い点で、注目を集めている移住スタイルです。 

二地域居住

もう1つご紹介するのは、「二地域居住」というパターンです。 

二地域居住とは、都会と地方2つの地域に生活拠点を持つライフスタイルのことです。都市部から地方へと完全に軸足を移すのではなく、それぞれの地域を行き来しながら暮らします。 

二地域居住を選ぶ理由はさまざまです。例えば、テレワークと出社を併用して働いている場合、出社の前後は都市部にある家で暮らし、週末やテレワークの日は地方の居住地で過ごす、といった方もいるでしょう。 

また、将来的に完全な移住を検討している方が、お試しとして二地域居住から移住生活を始めることもあります。賃貸で地方に家を借りながら、完全な移住のための住まいを探したり、実生活を通して移住先の雰囲気を感じたり、ということができます。 

二地域居住のさらに前段階として、ライトな移住体験を実現する「ワーケーション」という働き方も広がりを見せています。 
具体的な中身として、自然豊かな地方のリゾート地に滞在し、テレワークで仕事をしながら、ゆったりと旅気分を味わうことができます。 

昨今では個人だけでなく、企業・団体でワーケーションを活用するというケースも増えてきており、様々な形で広がりを見せています。 

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テレワーカーが活用できる移住支援金制度とは?

テレワークという新しい働き方が浸透しつつある今、国や自治体もテレワーカーの移住支援に力を入れています。
石川県でも、「いしかわ移住支援事業」として、都内に在住・もしくは通勤されている移住希望者向けの支援金制度を導入しています。 

ここでは、国が地方創生事業の一環として実施している「移住支援金」制度の内容や利用条件について、詳しく解説していきます。 

支援内容

「移住支援金」は、東京23区在住、あるいは在勤の方が、東京以外の地方に移住して就職・起業した際に受け取れる支援金です。支給額は、単身で最大60万円、複数人の世帯では最大100万円です。 

もともとの制度は、移住先で就職・起業した方のみを対象としていましたが、2021年に制度が緩和され、テレワークで現在の仕事を続けながら移住する方も支給の対象となりました。これまでは、地方移住には転職がほぼ必須の条件となっていましたが、テレワークの浸透により、「転職なき移住」が実現するようになったことが理由です。 

利用条件

移住支援金は、利用に一定の条件が設定されています。 

今回は、テレワーカーの利用条件をピックアップしてご紹介します。 

1つ目の条件は、在住・在勤期間です。東京23区または東京圏(都内、埼玉県、千葉県、神奈川県)に住んでいる期間が、「移住直前の10年間のうち、通算5年以上」かつ、「23区へ通勤」していることが条件です。 
また、直近で1年以上23区に在住・在勤していることも必須です。これには、通学期間も含めることができます。 

2つ目は、仕事に関する条件です。テレワークを前提としている方は、「テレワークにより、東京の仕事を継続すること」が求められます。
テレワーカーでなく、地方で就業・起業する場合にもそれぞれ条件が定められています。 

3つ目は、移住先の条件です。例えば、23区から横浜市に移住しても、支援金の対象とはなりません。
一都三県以外の道府県、あるいは、一都三県のうち「条件不利地域」として定められたエリアへの移住が対象です。 

申請期間は転入後3ヶ月以上1年以内となっており、移住先に住み続ける意思があるか、という点も考慮されます。 

企業による地方移住が伴うテレワーク促進事例

最後に、企業が主体となって地方移住・テレワークを促進している事例を3つご紹介します。今回ピックアップした企業のように、従業員が働きやすい環境を整えるべく、フレキシブルな働き方を推奨する企業は、近年徐々に増えています。 

富士通株式会社

富士通株式会社では、コロナ禍以前である2017年度よりテレワーク制度を本格的に導入しています。また、2020年からは心身の充実、社会的な健康を意味する「Well-being」を実現するコンセプト「Work Life Shift」を掲げ、施策の一つとして約8万人のグループ社員を原則テレワーク勤務としました。 
同時に、単身赴任の社員や、介護などの家族事情を抱える社員が自宅で働けるよう、「遠隔勤務」制度も設計し、普段は移住先からテレワークで業務を行い、出張として月に数回、東京へ出勤するという働き方を実現可能にしています。 

現在では、約1,500名の社員がこの遠隔勤務制度を活用しています。 
さらに、2020年度末には大分県、2021年度には和歌山県と、「移住およびワーケーションに関する包括協定」を締結しました。 

富士通側の目的としては、各県の地域資源・人材と、富士通の持つノウハウの活用を目指しており、反対に各県は、移住やワーケーションを通して、観光などの地方産業の活性化・地域課題の解決・定住人口の増加が見込めます。 
企業としても、社員のリフレッシュや知見の獲得、新たなビジネスの創出が期待でき、受け入れ先の地域としては活性化に繋がるという点で、Win-Winな取り組みの1つであると言えます。 

EYジャパングループ

EYジャパングループでは、2021年度より地方移住を支援する「EYフレリモ移住プログラム」を試験的に行っています。制度を利用することにより、都心の部署から所属を変えることなく、テレワークを活用した遠隔勤務ができるようになりました。 

2021年8月の時点で、このプログラムを利用している社員は約30人となっています。 
育児や介護、家族の転勤など、ライフステージの変化に伴って、キャリアを諦める方が少なくない中、多様な働き方を認めることで、長期的なキャリア形成・人材確保に繋げることが一つの狙いです。 

これにより、社内で増えているという地方移住を希望する社員にも対応可能となりました。 
また同時に、都市部へ集中していた人材を地方に分散させることができるため、自然災害発生時のBCP対策としての役割も担っています。 

株式会社USEN-NEXTHOLDINGS 

株式会社USEN-NEXTHOLDINGSでも、「オフィスで働く」という制約を設けることなく、柔軟な働き方を実現するため、テレワーク制度を導入しています。 

働く場所を選べるようになったことで、通勤や移動にかかる時間の短縮が図れるだけでなく、育児や介護との両立など、それぞれの状況に対応しながら、仕事を継続できるようになりました。 

同時に、IT技術を活用し、スマートで効率的な業務遂行を実現することにも成功しており、オフィスにいるのと同じように仕事ができる環境を整えています。 
また、社員一人ひとりに「自身の生産性を自分で考える」という意識を持ってもらい、自律した働き方を推進しています。 

ワーケーションで地方の魅力に触れてみましょう

テレワーク移住のメリットとデメリット、移住スタイルや支援制度についてご紹介しました。 

テレワークの普及で、地方への移住という選択肢は、より身近なものになったかもしれません。
移住支援金など、経済的な面での支援制度や、ワーケーションなどの気軽な移住体験は、地方移住に関心を寄せるテレワーカーを後押ししてくれるでしょう。 

まずはお試しとして、地方の魅力を知ってみたいという方なら、ワーケーションを利用するのもおすすめです。 
能登地域でも、ワーケーションの受け入れを強化しており、絶好のロケーションで仕事ができるコワーキングスペースなども整備しています。 
多様な移住スタイルに対応した、数多くのプログラムがありますので、気になる自治体の情報をチェックしてみましょう。 
当サイトでは、能登地域(羽咋市・中能登町・七尾市)の現地の魅力、ワーケーションプラン、移住希望者向けのイベント情報等を随時発信しています。 

能登への移住・ワーケーションをご検討中の方は是非ご相談ください。

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