ワーケーションとは?特徴やメリット・デメリットをご紹介

近年では、企業における働き方改革への取組みが活性化し「ワーケーション」が注目を集めています。

しかし、「そもそもワーケーションってどのような働き方なの?」「ワーケーションの定義って何?」といった疑問がある方も多いでしょう。

そこで本記事では、ワーケーションが普及した背景や特徴、メリット・デメリットやワーケーションを取り入れた企業の事例などを紹介します。

目次

ワーケーションとは?

「ワーケーション」とは、「ワーク=仕事」と「バケーション=休暇」という言葉を組み合わせた造語です。ワーケーションは通常のオフィス環境を離れ、旅行先や帰省地、またはリフレッシュできる場所で、休暇を楽しみながら仕事を行うスタイルを指します。

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ワーケーションの定義

国土交通省(観光庁)は以下のようにワーケーションを定義しています。

“Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語。テレワーク等を活用し、普段の職場や自宅とは異なる場所で仕事をしつつ、自分の時間も過ごすことです。余暇主体と仕事主体の2つのパターンがあります。”

引用:国土交通省観光庁|「新たな旅スタイル」ワーケーション&プレジャー

オフィスに出社して働くのが一般的なワークスタイルでしたが、最近では働き方改革の一環として、観光地で仕事をしながら休暇も楽しむ新しいスタイルが注目されています。

ワーケーションとテレワークの違い

ワーケーションとテレワークは混同されがちですが、実際は大きな違いがあります。

テレワークは、作業の場所をオフィス以外の場所に移すことを前提としており、自宅、カフェ、共同作業スペースなどで仕事をすることを指します。

一方でワーケーションは休暇が主要な目的で、好きな場所で働くという考え方です。

ワーケーションの種類

ワーケーションは働く目的や場所に応じて以下の2種類に分類されます。

  • 休暇型ワーケーション
  • 業務型ワーケーション

それぞれの特徴について確認していきましょう。

休暇型ワーケーション

休暇型ワーケーションは主目的が休暇であり、通常は企業の福利厚生の一環として提供されることが多いワーケーションです。

例えば、有給休暇を利用しながら、長期間にわたってリゾート地や観光地に滞在し、テレワークを行うといった働き方が、休暇型ワーケーションの典型的な例といえます。

業務型ワーケーション

業務型ワーケーションは、3つのタイプに細分化されます。

  • 地域課題解決型
  • 合宿型
  • サテライトオフィス

それぞれのワーケーションについて確認していきましょう。

地域課題解決型

地域課題に取り組み地域の関係者と協力し、解決策を共に考えるワーケーションです。

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合宿型

オフィスという環境から離れ、職場の仲間と議論を交わすワーケーションです。

サテライトオフィス

サテライトオフィスやシェアオフィスなどを利用して業務を行うワーケーションです。

ワーケーションが普及した背景

ワーケーションは、2000年代のアメリカで急速に普及し始めました。実はアメリカでは、企業が従業員に年次有給休暇を法的に義務づけられていません。

そのため、有給休暇は福利厚生の扱いとして企業が独自に設定しています。しかし、有給休暇を取得する権利が法律で明確に保護されていないことから、有給休暇の取得率が低いことが課題とされていました。

そこで、従業員の有給休暇取得率を向上させ、長期休暇の促進を図る目的でワーケーションが提唱されたのです。

働き方改革と共に日本でも注目

日本でワーケーションの概念が広まり始めたのは、2017年頃といわれています。日本航空株式会社やJTB株式会社、株式会社野村総合研究所などの民間企業が、ワーケーションを導入し始め、一部の自治体もワーケーションの誘致に積極的に取り組みました。

また、日本では労働基準法によって年次有給休暇の取得が保障されていますが、アメリカと同様に有給休暇の取得率が低いという課題がありました。

この状況に対処するため、2018年に成立した働き方改革関連法案により、企業は従業員に対して年間5日間の有給休暇取得を義務付けられました。この法律の変更により、ワーケーションを促進する法的および制度的な環境が整備されたといえます。

コロナ禍で急速に普及

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国内の企業でテレワークが急速に普及しました。一方で、外出制限やインバウンド需要の減少などの影響で、観光業界は大きな打撃を受けました。

このような状況下、観光業の振興や地域への移住者誘致を積極的に推進する自治体が増加しています。そして、国内企業でのテレワークの普及と地域振興のニーズが高まったことから、ワーケーションへの注目度が高まっているのです。

企業にとってのワーケーションのメリット

ワーケーションが企業にとってのメリットは以下の通りです。

  • 企業の価値を向上できる
  • 有給休暇の取得を促進できる
  • 人材の確保・定着率の向上が図れる
  • 生産性が上がり、イノベーションの創出につながる

企業側のそれぞれのメリットについて確認していきましょう。

企業の価値を向上できる

ワーケーションの導入により、企業の価値向上が可能となります。ワーケーションは、従業員の働きやすさやストレス軽減に焦点を当てた方法です。またワーケーションの導入で企業自体の魅力が高まり、その結果、企業の価値向上が期待できます。

そして従業員は、満足度が向上し所属意識が高まり、外部からの企業への評価も向上するでしょう。これは企業のブランディングの一環でもあり、ワーケーションの導入は企業の価値向上において重要な意味があります。

有給休暇の取得を促進できる

旅行先での仕事ができることは、ワーケーションのメリットのひとつです。有給休暇を利用して滞在期間を延長できる仕組みを整備することで、社員はワーケーション先でリラックスしたり観光を楽しんだりすることができるでしょう。

そして、社員の有給取得率が向上することが見込まれるため、企業全体の有給取得率を引き上げ、良い企業イメージをアピールする手助けとなります。

人材の確保・定着率の向上が図れる

ワーケーションの導入は、優秀な人材の確保も可能となります。

前述したように、ワーケーションは従業員の働きやすさを重視する取組みです。優秀な人材を確保するためには、企業が従業員を大切にし、多様な働き方を提供することが非常に重要なポイント

また、近年では少子化の影響により、優れた人材の獲得が難しくなっています。そこで、テレワークだけでなくワーケーションを取り入れることで、柔軟な働き方を実現し企業の魅力を高められるでしょう。

優秀な人材を獲得し、定着率を向上したい場合は、ワーケーションを積極的に採用して多様な働き方に対応する環境を整えることがおすすめです。

生産性が上がり、イノベーションの創出につながる

株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所、株式会社JTB、および日本航空株式会社が共同で行った「ワーケーションの実証実験」によれば、ワーケーションを実施することで仕事のパフォーマンスが20.7%向上し、ワーケーション終了後も5日間はその効果が持続することが確認されました。調査の結果、ワーケーションは生産性向上に非常に有効な働き方といえます。

また、ワーケーションを支援している観光地や施設では、必要なデスク、椅子、Wi-Fiなどの設備が整備されており、効率的に仕事を進めることができる環境が整っていることも重要なポイントです。

参考:株式会社 JTB

従業員にとってのワーケーションのメリット

ワーケーションが従業員にとってのメリットは以下の通りです。

  • ストレスを軽減し、リフレッシュできる
  • 長期休暇が取りやすくなる
  • 業務の効率が向上する

それぞれのメリットについて確認していきましょう。

ストレスを軽減し、リフレッシュできる

株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社JTB、日本航空株式会社が共同で行った「ワーケーションの実証実験」によれば、ワーケーションは仕事に対するストレスが37.3%低減し、終了後もその効果が5日間続くことが確認されています。

非日常の環境で仕事をすることで心身がリフレッシュされ、モチベーションが向上します。そのため、ワーケーションはライフスタイルにも良い影響をもたらす可能性が高いといえます。

参考:株式会社JTB

長期休暇が取りやすくなる

日本の有給休暇の取得率は国際的に低い水準とされており、長期の休暇や有給休暇の取得が依然として難しい状況が続いています。したがって長期休暇を取得しやすくすることは、従業員にとって大きなメリットとなります。

例えば、休暇の間に一部の時間を勤務に充て、その後リゾート地や観光地でテレワークを行うことができれば、長期休暇を取得しやすくなるでしょう。また、有給休暇を取得しやすくなれば、ハイシーズンを避けてリゾート地や観光地へ行くことができ、旅行費用や時間の節約にも繋がります。

業務の効率が向上する

リゾート地や観光地など、日常と異なる場所で休暇を楽しみながら仕事をすると、業務の効率が向上します。

科学的にも、人間は普段と異なる環境で過ごすことで脳が活性化することが確認されており、これを「場所ニューロン」と呼びます。また、通常と異なる場所で仕事をすることは、ストレス軽減やモチベーションの向上にも繋がるのです。

地域にとってのワーケーションのメリット

ワーケーションが地域にとってのメリットは以下の通りです。

  • 旅行需要の創出につながる
  • 関連事業の活性化され、雇用創出につながる

それぞれのメリットについて確認していきましょう。

旅行需要の創出につながる

通常、旅行や観光需要はハイシーズンに集中しがちですが、近年の新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ハイシーズン時の都道府県間の移動制限などの影響を受け観光業界は大きな打撃を受けています。

しかし、平日に新しい旅行需要を創出できることは、感染リスク対策を考慮しながら、旅行や観光需要の新しい取り組みといえます。

関連事業の活性化され、雇用創出につながる

関連事業の活性化において、関係者の増加や企業との協力関係の構築は非常に有効です。

例えば、ワーケーションを歓迎し積極的に受け入れる地域では、UIターン勤務やIT企業の誘致など、さまざまな取り組みを行っています。これにより、地域への関係人口の流入が増加し、地域全体の活性化に寄与すると期待されています。

ワーケーションのデメリット

一方で、ワーケーションには以下のような留意すべきデメリットもあります。

  • リモートワーク環境整備のために初期コストがかかる
  • 人事評価が難しくなる可能性がある
  • リモートワークが苦手な人には不向き
  • セキュリティ面のリスクが高まる

それぞれのデメリットについて確認していきましょう。

リモートワーク環境整備のために初期コストがかかる

ワーケーションには、導入と運用にかかるコストがデメリットとして考えられます。

ワーケーションを実施するには、まずテレワークができる環境を整備する必要があります。もしテレワークの環境が整っていない場合、システムの導入から始めなければなりません。

また、ワーケーションを提供する地域や施設の環境整備も必要です。そして導入したシステムや環境を適切に維持・管理するためにもコストがかかります。

人事評価が難しくなる可能性がある

ワーケーションのデメリットとして、従業員の人事評価が難しいという点が挙げられます。

ワーケーションは通常、従業員が遠隔地で業務を行うため、上司や管理者が従業員の活動の把握が難しいといえるでしょう。

結果、従業員のパフォーマンスを評価しにくいという点がデメリットになるケースもあります。したがって、ワーケーションを導入する場合は、人事評価の基準を明確に設定することが必要です。

リモートワークが苦手な人には不向き

ワーケーションは、テレワークやリモートワークが得意でない、または自己管理が難しい人には向いていないかもしれません。

ワーケーション先では通常のオフィスとは異なる環境で仕事をする必要があります。そして、ある意味誘惑も多いため、仕事モードに切り替えるのが難しい場合もあるでしょう。

また、複数人と一緒にワーケーションをする場合や、家族など同伴者がいる場合も注意が必要です。他の人とスケジュールを調整するのは一般の旅行でも難しいことですが、仕事が絡むとさらに調整が難しくなります。そのため、旅行前に調整や計画を十分に行う必要があります。

セキュリティ面のリスクが高まる

ワーケーションはセキュリティのリスクが高まるデメリットがあります。

ワーケーションは通常、社外で業務を行うため、社内の機密情報や個人情報などのセキュリティに関して注意する必要があります

ワーケーションを実施する場合、クラウドサービスの適切な利用やシステムのセキュリティ強化はもちろん、従業員一人ひとりがセキュリティに対する意識とスキルを向上させることも必要です。

ワーケーションが導入しやすい職種とは?

ワーケーションを導入しやすい職業は以下の通りです。

  • システムエンジニア・プログラマー
  • Webデザイナー
  • Webマーケター
  • Webライター
  • イラストレーター
  • 編集者

ワーケーションの導入事例

続いて、ワーケーションの導入事例を見ていきましょう。

日本航空株式会社

2015年から働き方改革に取り組んでいた日本航空は、有給休暇の取得率の低さに問題がありました。そこで日本航空は、2017年にワーケーションを導入。その結果、有給休暇の取得率が向上し、従業員のモチベーションも高まる成果に繋がりました。

具体的な施策としては、休暇型ワーケーションのスタイルが採用されています。日本航空では、デスクワークを行う従業員がワーケーションを利用でき、参加できる人数は総数で2,000人以上に上ります。

また誰もが参加しやすいように設計されており、遠隔地でのテレワーク体験や地元の人々との交流ができるよう工夫が凝らされています。

参照:国土交通省観光庁|日本空砲株式会社|導入企業事例

ユニリーバ・ジャパン

ユニリーバ・ジャパンは2016年に、社員が勤務場所や時間を自由に選ぶことができるように、「WAA(ワー)」という制度を導入しました。具体的には、上司に申請して特に支障がない場合、好きな場所で仕事ができるようになったのです。

勤務場所だけでなく、平日の5時から22時の間であれば自由に勤務時間や休憩時間を選べます。そして労働時間を一日単位ではなく、ひと月トータルで定めることで、柔軟な働き方を実現。工場のオペレーター以外の全社員が対象で、実施率はほぼ100%だと言われています。

さらに、この制度は地域活性化とも親和性が高く、2019年には「地域 de WAA」という新制度も導入されました。この制度では、地方自治体に設置している提携したコワーキングスペースを社員が無料で利用できるようになり、ワーケーションを通じて企業だけでなく地域再生の促進する取り組みが行われています。

参照:国土交通省観光庁|ユニリーバ・ジャパン|導入企業事例

野村総合研究所

野村総合研究所がワーケーションに取り組みを開始したのは2017年のことです。彼らは徳島県の古民家を活用し平日は業務を行い、休日には休暇を楽しむという業務型ワーケーションを実施しています。

そもそも、従業員のモチベーションを維持することを目的として始まりましたが、働く環境を変えることで新しいアイディアを生み出しやすくなるという期待も寄せられています。

さらに、2020年にはワーケーション受け入れ先の徳島県三好市での人材教育プログラムの立ち上げも検討されました。この取り組みは、企業と従業員だけでなく、受け入れ先の地域の活性化にも貢献するものとなっています。

参照:国土交通省観光庁|株式会社野村総合研究所(NRI)|導入企業事例

ワーケーショをして楽しみながら生産性を上げましょう!

今回は、ワーケーションが普及した背景や特徴、メリット・デメリットやワーケーションを取り入れた事例などを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

仕事と余暇を同時に楽しめるワーケーション。リモートワークやテレワークを採用する企業が増える中で、今後ますます普及する可能性があります。

新しい働き方としてメリットやデメリット、留意点などを理解し、機会があればぜひチャレンジしてみることをおすすめします。

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