地方移住後に新たに農業を始める際の流れや補助金について解説!

地方に移住し、自然の中で農業を楽しみたいと考えている方もいるのではないでしょうか。ですが、漠然としたイメージはあるものの詳細がわからず、なかなか踏み出せない方もいるはずです。

そこで、移住後に検討したい農業スタイルや実際に農業を始めるまでの流れ、活用できる支援金・補助金について解説します。この記事を読むことによって地方での農業に対し、より具体的なイメージを持てるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。

移住後の農業スタイル

一口に農業といっても、実にさまざまなスタイルもあります。そのため、自分がどのような形で農業に携わっていきたいと考えているのか明確にしておくのが良いでしょう。
代表的な農業スタイルは、以下の6つです。

家庭菜園

それほど大掛かりなものではなく、気軽に始められる方法を選択したいと考えているのなら、家庭菜園が向いています。
家庭菜園とは小規模な農業であり、営利を目的とすることなく、育てて楽しむこと、収穫することなどを目的として行います。
移住して家庭菜園をしたいのであれば、畑や大きめの庭がついている住宅を購入したり、借りたりすると良いでしょう。

また、地域によっては市民農園を提供している場合もあるため、そういったところを借りるのも一つの方法です。

週末農業

週末農業は、普段は他の仕事をしつつ、週末のみ農業の仕事をするスタイルです。
こちらも家庭菜園と同様に、本格的な本業として行うよりも、まずは始めてみたい、農業に触れてみたいと感じている方に向いています。

一般的には、レンタル農園と契約するほか、畑を持っている地主さんから借りる方法が挙げられます。中には、数人で一つの畑をシェアし、農業を行っている方もいます。
レンタルの形であれば、移住先の住居に庭や畑がなくても週末農業を始められます。
くわえて、週末のみ移住する週末移住を検討しているのであれば、畑や庭がついている移住先を選ぶことにより、週末農業を行いやすくなるでしょう。

・関連記事>>>週末移住って何?メリット・デメリットについて解説!

農園継承

これまでに農業に関する知識はそれほどないものの、ある程度大規模な農業に携わりたいと考えている方から選ばれているのが、農園継承です。
これは、すでに農園を行っている方から機械や設備などを引き継ぐ形で譲り受けることをいいます。もちろん、自分自身でも勉強する必要がありますが、技術やノウハウも含めて引き継いでもらえるのが一般的であるため、非常に心強いといえます。

地方には後継者がいないなどの問題から、農業を続けたくても続けられない方が多いです。そういった方から農地などを譲り受け、農業を始めるのが農園継承となります。

農林水産省でも経営継承には力を入れており、農業経営等に関する相談を受け付けています。

就農相談や農業経営の法人化、円滑な経営継承、事業計画の作成、規模拡大などの経営上の課題に対して、経営相談・経営診断や専門家の派遣・巡回指導等の伴走型支援を行う就農サポート・経営サポートを行う拠点を都道府県段階に整備しています。

出典:農林水産省:農業経営等に関する相談

なお、移住先の地域で必ずしも農園を譲ってくれる引退農家が見つかるとは限りません。そのため、移住前の段階で支援団体などに相談をしておいた方が良いでしょう。

新規就農

自分で新しく開業するのが新規就農です。
土地を探して耕作地に変え、育てる作物を選定したうえで販路開拓までを行います。雇用されるのとは異なり、自由度が高いメリットがある一方、初期投資がかかることや、ある程度軌道に乗るまで時間がかかるのがデメリットです。
移住して新規就農を目指すのであれば、移住先の土地で育てられる作物などについても十分調査が必要です。
自治体によっては移住者に向けた就農支援制度を用意しているところもありますので、各自治体のホームページなどをチェックしてみてください。

半農半X

半農とは、農業とそれ以外の仕事(X)を両方行うスタイルのことをいいます。家庭菜園よりも本格的な農業に本格的に取り組みたいと考えているものの、農業のみだと収入が厳しいような場合に向いているスタイルです。
農業が軌道に乗るまでのつなぎとして、他の仕事と掛け合わせながら半農半Xの形で行っている方もいます。

アルバイト

農業について全く知識がなく、まずは経験を積みたいと考えている方には、農業を営む法人の元でアルバイトするのがおすすめです。働きながら農業に関する知識が学べることに加えて新規就農よりもリスクが少ないため、検討しやすいのではないでしょうか。
移住前に雇用してくれそうな農業を営んでいる法人について、ある程度調べておくと良いでしょう。

移住をして農業を始めるまでの流れ

移住先で農業をしたいと考えている方は、まずはどのような流れで進めていくことになるのか確認しておきましょう。以下のようなステップで進んでいくことになります。

起業・就職を選択

はじめに決めたいのが、自分で新規に企業をして農家になるのか、就職して農業を学んでいくのかについてです。
新規企業の場合、どの程度の農家を目指すのか、そのためにはいくら費用がかかるのかについても明確にし、資金調達なども検討しなければなりません。

できる限りリスクを抑えるためにも、情報収集は欠かせないので、自分が目指したい農業を明確にしたうえで情報収集に取り組んでいきましょう。
情報収集にはさまざまな方法がありますが、手軽に利用できるのがWebサイトでの調査です。農業に関する情報サイトのほか、農林水産省などが行っている支援などについても確認しておきましょう。

また、農業に関するセミナーなども活用可能です。開催されているセミナーによって起業向けなのか就職なのかが変わるので、自分に向いているほうを選択してください。
どちらにしようか悩んでいるのであれば、両方の情報を収集し、判断する必要があります。

自分が移住したいと思う地域を選ぶ

移住して農業を始める場合、移住先の地域は慎重に検討する必要があります。
地域の決め方は、大きく分けて2つです。
1つ目は、先に住みたい地域を決め、その地域で育てられる作物に合わせて農業を行っていく形です。
2つ目は、育てたい作物から住みたい地域を決める方法で、すでに何を育てたいか決まっている方に向いています。

作物には寒冷地で育てるのに向いているものや温暖地が向いているものがあるほか、標高などの影響もあるため、その地域で育てるのに適したものを選択しなければなりません。「○○農家になりたい」と目的が決まっている場合は、その作物を育てるのに向いている移住先を調べましょう。

・関連記事>>>移住先の決め方とは?移住先を探す際のチェックポイントを解説

お試しで農業体験プログラムに参加する

これまで農業に触れたことがない方にぜひ挑戦して欲しいのが、お試し農業体験プログラムへの参加です。
選択するプログラムによってどの程度の日数をかけて行われるのかが異なります。数時間程度で終わるものもあれば、数日、数年かけて行われるものもあるので、気になるものに参加してみてはいかがでしょうか。

家庭菜園ではなく、本格的に農業に取り組みたいと考えているのであれば、ある程度長い期間参加できるプログラムが良いでしょう。農家になりたい方向けの支援金・補助金の中には、農業体験プログラムへの参加が義務づけられているものもあります。

移住も含めて農業体験プログラムに参加したい方には、羽咋市で開催されている就農支援のお試し移住プログラムがおすすめです。空き家を利用した移住体験施設での生活が可能で、2日~最大5日間まで無料で利用できます。施設の利用料はもちろん、電気・水道などもすべて無料なので、気軽に試してみてはいかがでしょうか。家電製品・家具設置済みで、無料wi-fiも完備されています。
通常の移住体験に加え、ご希望の方は1回500円で農業体験プログラムが利用可能です。また、農業体験プログラムのみの受講もできるため、ぜひ活用してみてください。

<参考記事:羽咋市移住定住ポータルサイト:羽咋市移住体験住宅のご案内

また七尾市でも、農業体験ができる民宿があったり、中能登町では農家体験が出来るプログラムを提供したりしていますので、是非併せてチェックしてみてください。

農業を始める際に使える支援金・補助金

農業を始めたいと考えている方をサポートするため、さまざまな支援金や補助金が用意されています。利用できるものは有効活用していきましょう。
代表的な支援金・補助金は以下の通りです。

強い農業づくり総合支援交付金

産地の収益力強化だけではなく、持続的な発展及び食品流通の合理化を目的とし、強い農業を作りに求められる産地基幹施設、卸売市場施設の整備といったものを支援するための制度です。

一部紹介すると、農地中間管理機構を通じて農地を借りた方が融資を活用して農業用機械・施設を導入する際、融資残額に対して事業費の3/10以内の補助率で支援されます。上限は、個人で1,000万円、法人は1,500万円です。
他にも、トラクターなどの農業用機械やハウス等の施設導入では、上限を300万円として融資残額に対して事業費の3/10以内の補助率で支援が受けられます。
対象となる方や内容などについてよく確認したうえで利用を検討してみてください。

<参考記事:(PDF)中小企業庁/農林水産省/厚生労働省:農業経営に使える税制・融資・補助金について[PDF]

農業次世代人材投資資金

これから農業者として次世代を担っていきたいと考えている方を対象とした支援制度です。就農前の研修を後押しするための資金と、就農直後に経営を確立するための資金が交付されます。

就農準備資金では、都道府県によって認められている道府県の農業大学校等の研修機関等で研修を受ける方に対し、最長で2年間、月12.5万円の資金が交付されます。
また、経営開始資金は新しく就農する方を対象とし、経営が安定するまでの3年間にわたり、月12.5万円が交付されるものです。
交付にあたり、さまざまな要件が定められているので、対象となるか確認してみてください。

<参考記事:農林水産省:就農準備資金・経営開始資金(農業次世代人材投資資金)

青年等就農資金

日本政策金融公庫農林水産事業が行っている支援で、これから農家経営を始めたいと考えている方を対象に無利子の資金を提供しています。
対象となるのは、市町村から青年等就農計画に関する認定を受けた個人・法人である認定新規就農者です。あらかじめ経営改善資金計画を作成し、認定を受けなければなりません。

資金は施設・機械、果樹・家畜等、借地料などの一括支払い、その他の経営費に活用可能です。17年以内(うち据置期間5年以内)が返済期間となり、融資限度額は3,700万円(特認1億円)です。借入の全期間にわたり無利子が適用されます。

<参考記事:日本政策金融公庫:青年等就農資金

農業近代化支援金

農業を営む方や農協、農協連合会などを対象とした制度で、経営改善を図るために必要となる長期かつ低利の資金です。金利については取扱金融機関によって変わるため、最新のものをご確認ください。
借入限度額は、農業を営む個人が1,800万円、法人は2億円、農協等は15億円です。資金使途に応じ7~20年以内(据置2~7年以内)の償還期限が設定されています。
農産物の生産や流通・加工などに必要な施設の取得・改良、その他さまざまな目的で役立てることが可能です。

<参考記事:(PDF)農林水産省:農業近代化資金の概要[PDF]

地域おこし協力隊

地域おこし協力隊とは、都市地域から特定の地方に住民票を移し、地域協力活動を行いながらその土地への定住や定着などを図るための取り組みです。隊員に選ばれると概ね1年以上、3年未満の任期があり、任期中は隊員1人あたり480万円を上限として財政措置が取られます。

さらに、任期後には起業を希望する方に対する補助制度も用意されているので、活用してみてはいかがでしょうか。地域ブランドや地場産品の開発や販売、PRなどのほか、地域おこしに関するさまざまな支援などの活動を行っていくことになります。

例えば、石川県羽咋市が令和4年6月16日から募集を行っている地域おこし協力隊があります。こちらでは、週35時間、月に20日程度の活動や報告書の作成を行うことになり、報酬は月額22万円です。
空き農地・高齢者生活支援・世代間交流・経済活動に関する問題などを解決するための活動、その他取り組みなどを自治体と協力しながら行ってきます。

七尾市では令和4年度に2名の隊員を募集しており、令和4年10月以降で、着任日から最大3年間(36カ月)の活動の中で「魅力的な都市・地域づくり」をミッションとして活動を行っています。

具体的にどのような活動が求められるのかは自治体によって異なるので、移住を検討している自治体に確認してみてください。

<参考記事:(PDF)羽咋市:地域おこし協力隊(協働の地域づくり推進)の募集について[PDF]

まずは自治体に相談しましょう

移住して農業を始めたいと考えている方のため、おさえておきたいポイントについて解説しました。移住後に行う農業について、より具体的なイメージが持てたのではないでしょうか。
もしわからないことがあれば、移住をサポートしている団体に相談してみるのがおすすめです。

能登地域(七尾市・中能登町・羽咋市)への移住をサポートしているのと住。では、移住プランナーが随時相談を受け付けておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。