【移住者が語る】自然と暮らしやすさが並存する羽咋市の魅力

能登移住の写真

豊富な緑に広い空……。地方は、都心にはない素晴らしい魅力が溢れています。

そんな環境だからこそ、実現できるビジネスアイデアがあるのではないでしょうか。

 

本記事では、石川県羽咋市にて空き家をリノベーションし、民泊をオープンされた建築士の上田寛様に、民泊ビジネスや移住の体験談、地域の魅力についてお伺いしました。

能登エリアへ移住をお考えの方だけでなく、起業を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。

インタビュイーのプロフィール

移住者の上田さん

上田 寛(うえだ ひろし)様

石川県 羽咋市出身

建築士

 

大阪の芸術大学を卒業後、建築士として東京の企業に就職

2021年に羽咋市神子原町の空き家を購入

建築士としてのキャリアを活かし、空き家の改修、民泊施設の設計にあたった

2023年に民泊施設「くくのちステイ」をオープン

現在は、東京と羽咋市に拠点を構え、建築業と民泊施設の運営に勤しむ

 

地方だからこそ得られるビジネスチャンスがある

 

東京から羽咋市に拠点を広げようと思ったきっかけはなんですか?

くくのちステイ

東京から羽咋市へUターンを考えたきっかけは、新型コロナウイルス感染症の拡大でした。

 

東京で建築事業を行っておりますが、コロナが流行している期間は、仕事の依頼数が減ってしまったんですよね……。

そのとき、「ビジネスをするうえで、お金は自分が動くから得られるものであって、ただ待っているだけでは駄目なんだ」と痛感させられました。

 

そこで、地方に民泊を開業してみてはどうだろうかと閃きました。

自身で宿泊施設を保有して、貸し出すようなビジネスを立ち上げれば、今の収入をより安定させられるんじゃないかなって考えたんです。

 

実際、ぼくの建築士仲間には、自身でゲストハウスや民泊を経営している方が、何名かいらっしゃいます。

地方には、東京では得難いビジネスチャンスがあるんじゃないかって思ったんです。

 

石川県のなかでも、羽咋市を選んだ理由を教えてください

 

民泊を開業する場所に、羽咋市を選んだ理由は、ぼくの出身地だからということと、空き家の情報があったからです。

 

ぼくは大学進学と同時に上京しましたが、それでも、羽咋市は知り合いが多いエリアなので、ほかの場所と比べて、居心地の良さと安心感がありました。

そういう場所のほうが、心置きなく事業に注力できそうな気がしたんです。

 

とはいえ、民泊の事業を思い立った当初は、ほかの県での開業を想定していました。

コロナが流行る前は、100万~300万円くらいで買える観光地の別荘がたくさんあったんです。

それを狙っていたのですが、2019年以降、コロナによる巣ごもり需要の増加から、物件の価格が高騰したため、とても手が出せるような値段ではなくなってしまいました。

 

一度は民泊の開業を諦めかけましたが、ふと、地元の石川県に目を向けてみたら、手頃で良さそうな空き家の情報を見つけたので、「地元でチャレンジしてみよう!」と決意しました。

 

ご購入された物件はどのようにして探されたのでしょうか?

 

現地で情報収集をしつつ、「空き家バンク」で常に物件をチェックしていました。

 

羽咋市へのUターンを決めてからは、仕事の合間を見つけては、何度も現地に足を運んで物件を探しましたが、理想通りの空き家は見つけられませんでした。

 

あとから聞いた話ですが、ぼくが家を探していた当時は、「空き家はあるけど、家を貸し出してくれる人が少ない」って状況だったみたいです。

 

今は、だいぶ物件数が増えてきたみたいですよ。

 

購入した家は、「空き家バンク」で見つけた物件です。

ボロボロの空き家であるにもかかわらず、申し込んだ時点で、ほかに3組もの内見申請が入っていたようで、正直焦りはありました。

 

無事に家を購入できたときは、安堵すると同時に、羽咋市へ移住を希望する方がこんなにもいるのかという驚きと、この土地の将来性を感じました。

 

移住する際に、補助金など利用した制度はありますか?

 

「創業・第二創業促進補助金」という制度を利用しました。

これは、新規に創業する人や、事業承継をして新たな事業を始める人に対して、創業時にかかった費用の一部を国が補助してくれる制度です。

 

ですが、これ以外の制度は特に使いませんでした。

移住に対する補助金や助成金の制度もありますが、ぼくの条件に当てはまる良い制度は少なかったからです。

 

また、ぼくの考えで、そのような制度には、あえて頼らないようにしたところもあります。

補助金に頼らないと立ち上げられない事業計画では、いざ、資金の補填が切れたときに、事業を維持できなくなりかねません。

 

補助金や助成金に頼らなくても、自分の力だけでやれる方法に注力しました。

 

移住する際に、大変だったことはありますか?

 

東京と羽咋市を往復する交通費を工面するのが、大変でした。

物件探しを始めてから現在まで、何度も行ったり来たりしていますからね。

 

新幹線を使った場合、往復で3万円ほど負担しなければならず、それを毎月4回するとなると……結構な金額がかかります(笑)

夜行バスを使って、できるだけ節約するようにはしましたが、事業を続けるうえで、これからも東京と羽咋市の往復を続ける必要があります。

今後は、できるだけ往来を減らせるように、従業員を雇用するなどして改善していくつもりです。

 

もう一つ、休みを確保しづらかったので、体力的にきつかったというのは正直あります。

平日は東京で建築士の仕事をして、土日は羽咋市で民泊ビジネスの準備を進める生活を送っていましたので、「いつ休めばよいのだろう」って感じでした。

 

とはいえ、現在も同じような生活をしているので、この大変さも変わらずじまいですね(笑)

 

旅人と地域を繋ぐ交流拠点を作る

 

らためて上田様が運営されている民泊について教えてください

 

羽咋市内の神子原町にある空き家を改修した民泊施設「くくのちステイ」は、旅人と地域を繋げるような交流拠点となる場所として、開業しました。

 

2023年6月28日にオープンして以来、多くの旅行者と地元の方々にご利用いただいております。

木造2階建ての建物で、2階は相部屋で4名、1階は1名までお泊まりいただけます。

宿泊はもちろんですが、地元エリアの方も利用できるカフェバーを併設しており、シェアキッチンやワークショップができるシェアラウンジとしても利用可能です。

 

ちなみに、民泊名の「くくのち」は、木の神様「くくのちがみ」から、お名前をお借りしました。

外には里山と、広大な棚田があり、豊かな自然と、ゆるやかに流れる時間をご堪能いただけます。

 

民泊のこだわったポイントはありますか?

くくのちステイ

「田舎の親せきの家に遊びに来たような雰囲気」を、意識して設計しました。

古民家の良さを活かしつつ、直すべきポイントは徹底的に改修して、懐かしさと清潔感が感じられる建物に仕上げています。

 

旅行者と地元の方が交流できる場所にしたいという想いがあったため、奇抜なデザインは排除して、ご年配の方々も気軽に来られる雰囲気を大切にしています。

 

くくのちステイの1階には、バーカウンターを設置しました。

週末には、ぼくがカウンターに立ち、宿泊客と地元の方が利用できるバーとして営業しています。

違うグループのお客様が一緒にお酒を飲み、交流を楽しむ場となっており、「どこの出身なんですか?」といった会話が自然に生まれる空間が築けています。

 

オープン後の民泊の反響はいかがですか?

 

くくのちステイをオープンして以来、ありがたいことにたくさんのお客様にご利用いただいております。

オープンした翌月は、毎週のように宿泊のご予約をいただいておりましたし、その後も隔週でお客様が来てくださいました。

 

とはいえ、集客のために行った施策は、宿泊施設のマッチングサイトに掲載したくらいで、やるべきことをやり切ったとはいえません。

今後、より盛り上げるためにも、インターネット上で広告を打ち出すなど、引き続き施策を講じたいと考えています。

 

羽咋市ではどのような一日をお過ごしですか?

 

先ほどもお伝えしたことですが、ぼくは、平日を東京で、土日は羽咋市で仕事をするような生活を送っています。

なので、金曜日の夜は、東京での仕事が終わり次第、22時発の夜行バスに乗って、金沢市に向かいます。

 

翌朝6時半頃、金沢市に到着したら、そこから1時間ほどかけて、羽咋市に行き、お客様をお迎えする準備を始めるのが週例です。

午前中は館内を掃除し、お昼に休憩を少し挟みます。

16時~18時にはお客様がいらっしゃるので、それまでに買い出しを済ませるようにしています。

 

宿泊されるお客様がチェックインされるのと同時にバー営業も開始し、バーに来て下さったお客様と夜まで飲み明かすことが多いです。

 

休憩時間が少なくて大変ではありますが、バーカウンターに立つと仕事モードのスイッチが入る感覚があるんです。

お客様の立場に立って、「どうしたら喜んでもらえるかな?」と常に考えながら、接客に臨んでいます。

 

翌朝7時頃に起床して、チェックアウトの時間までは、宿泊されているお客様をお連れして近隣の案内をしています。

 

今後の展望をお伺いしてもよろしいでしょうか?

 

地域の活性化に貢献したいと考えています。

 

近年、地元の民間事業者が主導し、魅力的なエリアを創出する「エリアリノベーション」という手法が注目されつつあります。

 

羽咋市のなかでも、民泊のある神子原町は町民300人ちょっとの小さい集落です。

そんなエリアに宿泊施設を設けたので、それに付随する飲食店や商店ができれば、もっと楽しめる地域になるんじゃないかなと思っています。

 

将来的には、宿泊施設を増やして、地域を更に盛り上げていきたいですね。

 

最近では、神子原町に移住する方が増えています。

エリアリノベーションを進めて、町に魅力を感じるきっかけを増やし、ここに帰ってきたいと思える場所にできれば、という気持ちがあります。

 

羽咋市は自然と暮らしやすさが並存する、ちょうどよい田舎

 

羽咋市の魅力を教えてください

能登の田園

この地域の魅力は、空気がおいしくて、景色がきれいなところです。

ぼくが運営する民泊から少し歩いたところに、棚田がバーッと広がるエリアがあるんですけど、空を遮るものが何もなくて、すっごく広いんです。

その景色を見て、映画「サマーウォーズ」を連想させる場所だとおっしゃる方がいましたね。

 

散歩をしていて、気持ち良い場所だと思います。

 

ぼくは、この辺一帯を「ちょうどよい田舎」だと感じています。

というのも、美しい自然がありつつ、車を少し走らせれば、金沢市に出られるんです。

 

民泊の周辺は、飲食店が少なく夕方5時には閉まってしまう店もありますが、金沢市や羽咋市駅周辺まで出れば、ホームセンターや24時間営業のスーパーもあります。

生活するうえで、不便に感じることは少ないんじゃないでしょうか。

 

自家用車は必須ですが、ここは住みよい町です。

ちなみに、町乗りするだけなら、軽自動車で問題ありません。

 

地元のコミュニティに馴染むコツはありますか?

 

地元の行事に参加することが大切です。

率先して参加すれば、地元住民から顔も覚えられますし、馴染みやすくなるはずです。

 

草刈りなど、地域のちょっとしたイベントはもちろんですが、お祭りには絶対に参加しましょう。

地元住民とコミュニケーションをとるなら、遊びに行くだけではなく、応援をしに行ったほうがよいですね。

 

ちなみに、ぼくのおすすめしたいお祭りは、神子原町で行われる「八幡神社の秋季祭礼」です。

石川県内でも有名なお祭りなのですが、神輿だけでなく、獅子舞が出るのが一番の見どころです。

すごい迫力で、見たらきっと心が揺さぶられると思います。

 

移住を考えている方に向けてアドバイスをお願いします

移住者上田さん

「農業をしたい」などと、夢だけを持って移住した場合、理想と現実のギャップにぶつかって、後々、大変な思いをするかもしれません。

 

そういったギャップをなくすためにも、移住をする前に現地へ行って、遊んでみてください。

そのエリアが、自分に合っているのか、楽しめるのかを確かめてほしいです。

居酒屋で地域の方とお酒を飲むなど、交流できる場所が見つけられると、なおよいですね。

 

移住後ももちろん、地域の方々と積極的にコミュニケーションをとりましょう。

地域の人とよい人間関係を築いたほうが、暮らしやすいはずです。

引っ越した際にあいさつするだけでも、だいぶ印象が変わると思いますよ。

都会だと、改めて挨拶する機会が少ないですし、隣近所を知らないってケースはざらにありますからね。

 

広大な棚田や空が広がる場所、羽咋市

能登移住の写真

いかがでしたでしょうか?

 

今回は、ご自身のビジネスを広げるために、羽咋市へUターンし、民泊をオープンされた建築士の上田様にお話を伺いました。

 

宿泊客だけではなく、地元住民も気軽に利用できるバーを併設した民泊は、いまや、旅人と地元の方を繋げる交流拠点になっています。

上田様のご活躍が、羽咋市をより活性化させ、より賑わいのある町になることを願っております。

 

のと住。では、能登に移住された方のインタビュー記事を掲載しております。

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