【移住者が語る】穏やかな風土が育む中能登町の魅力
せわしない都心から離れ、ゆるやかに時間が流れる地方での暮らしに憧れる方も少なくないと思います。
とはいえ、移住したあとのライフスタイルの変化や、実際の住み心地は気になるところです。
そこで本記事では、東京から、ご自身の地元である石川県中能登町に拠点を移した書道家の桜鱗様に、中能登町の魅力や実生活について、お伺いしました。
移住をご検討されている方は、ぜひ、最後までご覧ください。
目次
インタビュイーのプロフィール
桜鱗(おうりん)様
1978年生まれ、石川県中能登町出身
書道家
大学進学にあたって、上京
卒業後は、5年ほど有名寿司店にて女将業を担う
寿司店の職人の仕事に芸術性を感じ、感銘を受け、表現の道に進むことを決意
2010年に書道家へ転身し、現在は中能登町と東京に拠点を据え、精力的な活動を続ける
中能登町は心の中に在りつづけた大切な故郷
東京から中能登町に帰郷しようと思ったきっかけはなんですか?
年齢を重ねるごとにわたしの故郷である、中能登町の存在を大きく感じるようになったことです。
わたし自身、東京が嫌いだったわけではなく、むしろ好きだったので、東京の大学に進学を決め、上京しました。
東京では多くの友達や仲間に恵まれ、楽しい日々を過ごしており、帰省しない時期もありましたね。
とはいえ、「故郷」はいつだって、わたしの心の中に在りつづけました。
折に触れて地元に帰ると、家族や友人が温かく迎えてくれますし、故郷の中能登に満ちた空気や時間の流れ、こういったものすべてが、わたしを心底、癒してくれるのを感じました。
自分のなかで故郷の存在が大きく感じられるようになったのは、ちょうど30歳を超えたあたりだったと思います。
書道をするなら、中能登町のような、自然が豊かで穏やかな環境に身を置いて取り組みたいなって気持ちもありました。
2019年頃から、徐々に拠点を中能登町に移し始めました。
中能登町と東京の2か所に拠点を据え、活動されているとのことですが、どのような生活を送っているのでしょうか?
2拠点での活動を始めた当初は、月の半分を、それぞれの土地で過ごすような生活をしていました。
一気に、中能登町に拠点を移すことはできなかったので、段階を踏んで、少しずつ準備を進めた感じです。
そのあと、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、徐々に中能登町での活動に主軸を置き始めました。
今では、中能登町での活動が大半を占めています。
現在、東京には、イベントなどの用事があった際に足を運んでいますが、そうでなければ1~2か月に1回行く程度ですね。
日帰りで中能登町に帰ってくることもあります。
地元は家族や友人からのサポートも受けられる心強さがあって、仕事に打ち込みやすい環境だと感じています。
中能登町への帰郷を伝えた際、周りの方の反応はいかがでしたか?
東京の友人や仕事仲間は、わたしの活動を応援してくださる方ばかりでしたので、能登への帰郷を話したときも、みんな「故郷での活動は良いことだね」と、賛同してくれました。
それに、わたしの仕事って、データでのやり取りで完結できることが多いので、住む場所が離れていても、これまでと変わらず一緒に仕事ができますからね!
そういう意味でも、今後、関わり合いがなくなるわけでもないですし、安心して送り出してくれたのかなという印象です。
中能登町に拠点を移して、お仕事にどんな変化がありましたか?
中能登町の穏やかな空気や、ゆったりとした時間の流れに身をゆだねると、創作意欲が沸く感覚がありますね。
あと、一番大きな影響……というか、中能登に来てよかったと思うのは、独自の作風を見つけられたことです。
実は、わたしの作品に、『されど雑草』というシリーズがありまして。
『されど雑草』の特徴は、近隣で摘み取った野草に黒いアクリル絵の具を塗り、わたしの書に押し当てて、葉脈や形を写した点にあります。
この作風は、自然が豊かな環境に身を置いたからこそ、生まれたものだと思っています。
書道を始めてしばらくは、「自分の作品はこれです!」と言えるような作風がなくて、随分苦しんできました。
書道家は世界中にたくさんいますから、独自性が欲しかったんです。
「わたしにしか書けないものってなんだろう」と、ずっと模索していました。
なので、地元で『されど雑草』という作風に出会えたのは、わたしにとって本当に大きな出来事でした。
ちなみに、今お住まいの家は、どのように見つけられましたか?
今は、わたしが生まれ育った実家に住んでいます。
築100年くらいの家ですね。
あと、近所に、実家が保有している古民家がありまして、そこをアトリエとして使っています。
創作のための作業部屋としてだけでなく、仕事の打ち合わせや、レッスン、個展の会場としても活用しています。
リフォームするほどではありませんでしたが、老朽化している部分もあるうえ、ホコリだらけだったので、一生懸命を掃除して、どうにか使える状態にしました。
もともと住む家もアトリエもあるって環境は、恵まれていたと思います。
中能登町は挑戦を応援し、支えあう温かい町
中能登町では、どのような活動をされていますか?
ありがたいことに、最近は能登エリアを中心に、お仕事のご依頼をいただけています。
先日は、能登の七尾市内にある和倉温泉街で、個展を開催しました。
老舗温泉宿である加賀屋さんをメイン会場とし、お祭り会館、青林寺、信行寺の4会場で作品を展示させていただきました。
今回、展示会場として利用させていただいた場所は、どこも歴史と伝統があり、ロケーションもすばらしいところです。
来場者には、わたしの作品を楽しんでもらうと同時に、これらの施設を回遊していただき、その魅力を堪能してもらいたいと思っていました。
結果的に、旅行客だけでなく、地元の方も足を運んでくださり、大盛況を得るに至ります。
地元の観光地や旅館って、なかなか行く機会がないじゃないですか。
だから、地元の方々が能登の魅力を再発見する機会になっていたら、嬉しいですね。
能登の方とはどのようにコミュニケーションをとられていますか?
中能登に戻ってきてからは、「イジュトーク」という、七尾市で定期的に開催されている移住者交流会に参加しています。
能登の移住者が集まって、座談会をするようなイベントで、二次会ではお酒を飲んだりもしています。
そのイジュトークをきっかけに、いろんな方々とのつながりをもつことができましたね。
あとは、自身で個展を開催して、地元の方々にわたしの作品を見ていただく機会を設けるようにしています。
そんな活動を続けるうちに、人との繋がりが生まれて、ありがたいことに、お仕事やイベントへの出演依頼が増えました。
今後の展望を教えてください
中能登での活動は、今後もわたしの生活の基盤として根付かせていけるようにしたいです。
ここがわたしのホームだなって思っていますし、人との繋がりをずっと大切にしていきたいですね。
並行して、これからは東京での活動にも力を入れるつもりです。
東京でのご縁も大切にしつつ、徐々に仕事を増やしていければと思っています。
そのうえでも、最終的な望みとしては、いずれ、海外に作品を持っていきたいと考えています。
『されど雑草』は、その独自性が評価され、これまでに多くの方からお褒めいただいた作品群です。
また、“書”というのは、海外で人気のあるコンテンツでもありますから、いずれわたしの作品を持ち込んで、ブレイクさせるのが夢です。
美しい自然に囲まれる、ストレスとかけ離れた中能登での生活
普段はどのような一日をお過ごしですか?
書道家の一日って、気になりますよね(笑)
でも、わたしの場合、仕事とプライベートの境
があまりなくて、何時から何時までこれをするという決まりがそんなにないんです。
大体、朝起きたら、トイレを掃除して、仏壇に手を合わせます。
その後、温かい飲み物を飲みながら、メールのチェックなど、パソコン作業をこなします。
あとは、打ち合わせやイベントがある日は、それに基づいて動きますが、予定がなければ、自宅で創作活動や事務作業を行う感じです。
夕方には、週に4~5日ほどジムに行って、2時間くらい運動をしています。
そして夜になると、また仕事をしていますね。
会社勤めされている方のような、決まった時間での仕事ではないので、その日のスケジュールに合わせて生活しています。
仕事の都合によっては、徹夜することもありますが、わたしには今のライフスタイルが合っているみたいで、不満もストレスもまったくありません。
以前は不眠に苦しんだ時期もありましたが、最近では布団に入って5分で寝ちゃう日もあるくらいです(笑)
今は、心身ともに健康的な毎日を過ごしています。
住むうえでの中能登町の魅力を教えてください
中能登の魅力は、とにかく穏やかな風土にあります。
温かい人ばかりですし、食事もおいしいし。
“中能登時間”って言うのでしょうか……、ゆったりとした時間が流れているような気がします。
何気ない田園風景であったり、季節ごとに色を変える山々であったり、とにかく美しい自然が豊富です。
また、少し車を走らせれば、金沢市や七尾市、富山県にも行けるので、“自然と利便性を兼ね備えた場所”だと感じています。
近隣には観光名所も、たくさんありますよ。
わたしが好きな場所でもある「千里浜渚ドライブウェイ」や、「七尾城跡」も近いですしね。
そういった意味でも、癒しを得られる魅力的な場所だと思います。
でも、雪がたくさん降ると、大変です!
大雪の翌朝には、地元住民総出で雪かきを頑張っています(笑)
中能登町のおいしい食べ物はありますか?
中能登は海が近いこともあり、新鮮な魚介が豊富なので、お寿司も本当においしいです。
回転寿司のクオリティが、めちゃめちゃ高いんですよ!
スーパーで売っている魚の質も良いですし、東京より安い気がします。
また、お水がきれいで、お米もおいしい。
農家さんが多いので、無農薬のお野菜も手に入りやすいです。
能登は食に恵まれた土地だと思います。
移住生活の秘訣は、土地の風土と人との交流をありのままに楽しむこと
地域の方と交流を深める方法を教えてください
先ほど紹介した「イジュトーク」など、地域の交流会に参加するのは、情報収集や人との繋がりを構築するうえで、大切だと思います。
あとは、行きつけのお店をつくって、飲みに行くのもよいですね。
いろんな人と話すきっかけが得られます。
くわえて、わたしはSNSをコミュニケーションツールとして活用しています。
なかでも“Facebook”は、おすすめです。
実名でやり取りができますし、その方のリアルな活動が見えるんですよね。
それこそ、飲み屋で知り合った方とFacebookだけでも繋がっておけば、後々、仕事のお付き合いが始まる、なんてこともあるかもしれません。
移住を考えている方に向けて、アドバイスがあればお願いします
移住者の方を見ていると、面白い感性をもっていて、能動的に活動するエネルギッシュな人が多い印象を受けます。
地元民には、保守的で、かつ新しいものを敬遠する方もいますが、移住者のみなさんには、ぜひ、その垣根を取り払って、積極的に交流していってほしいです。
そうすることで、中能登町にも新しい風が入ってきて、この土地が活性化し、新しいものが生まれるんじゃないかなって思います。
あとは、移住者同士の交流も積極的にとってほしいですね。
移住者の和が広がれば、そこから自然と地元民との繋がりも生まれて、どんどんコミュニティが広がっていくはずです。
中能登町は、自然が豊かで、穏やかな場所です。
変に構えずに、友人をたくさん増やして、中能登の良さをおもいっきり楽しんでもらえたら嬉しいですね。
穏やかな時間の流れる中能登町は、自然と利便性を兼ね備えた暮らしやすい町
いかがでしたでしょうか?
今回は、ご自身の活動をきっかけに、中能登町へUターンされた書道家の桜鱗様にお話をお伺いしました。
中能登町と東京に拠点を据え、精力的な活動を続けていらっしゃいます。
豊かな自然と人の温かさが溢れる中能登町は、創作に新たなインスピレーションを与えてくれる環境なのかもしれません。
国内に留まらず、世界へと桜鱗様の作品が広がっていくことを願っております。
のと住。では、能登に移住された方のインタビュー記事を掲載しています。
能登への移住をお考えの方に向けて、能登エリアの魅力や情報を発信するとともに、移住に関する相談やサポートも承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
のと住。では、能登に移住された方のインタビュー記事を多数、掲載しています。
能登への移住を考えている方に向けて、能登地域の特色や魅力を発信するとともに、移住に関するご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。